この人は真の対話の達人だと思う人

いろんな人が対話に対する本を出し、講演をしている。
精神科医もいれば、哲学家もいるし、カウンセラーもいる。
それらの人々が綴る書物や、講演の内容はどれも素晴らしく、感銘を受ける。

 しかし、実際の本人に会って、ざっくばらんに話すと意外と偏見に満ちていたり、閉塞的であったりと、予想と違う振る舞いをする。

内心、がっくりきながらも、人というのは表向きの気の張った状態とそうでない状態では、言っていることとやっていることに矛盾が生じるのだな~と思って、半ば諦めていた。

ところが先日、この人は真の対話をし続けていると信じられる人に出会った。
その人とは山海義之氏。
茨城県つくば市に本社を置く、サイバーダインの社長で筑波大学の教授である。
いつも穏やかで、表裏がなく、仕事に人に真っ正面から向き合う素晴らしいお方だ。
そしてなにより、素人の質問や疑問に真摯に向き合う姿に、「聴く」の姿勢を学ばせていただいた。

氏はもともと人間として出来た人なのかもしれない。
でも、幾多の苦難を乗り越え、それがまた人間を磨くいい機会となったのだろう。
年を重ねる毎に、魅力が増し、私の中では、仏のように見えるときすらある。

強い信念と志、ビジョンを持ち、「自立歩行したい、目で意思を伝えたい、身体を動かしたい!」という患者の心からの願いに応える様は、柔らかい光に包まれた高僧のようだ。
通常経営者とは、燃えたぎるものが強くオーラとして感じられるところ、山海先生は慈愛のオーラに満ちている。

嗚呼、対話のプロの仕事でなくても、対話の達人というのはいるのだと、目から鱗の体験であった。
ロボットはこれから我々の世界に浸透し、大きな助けとなってくれるだろう。
でも、忘れてはいけない。一研究者が力の限りを尽くして、対話をし続けた結果を我々は甘受するのだということを。
一人の思いが世界を変える。そこには必ず対話がある。

対話の偉大さを知るよい出会いだった。心より感謝する。