動物の発生と精神発達の共通点

ちょっちむずかしいお話。

発生生物学において、細胞が分化するときのシグナルとして、ある物質の濃度勾配
が関係する。
このように働く物質のことを、モルフォゲンという。
モルフォゲンが、体内時計に沿って、拡散していけば、その個体は正常成長する。
しかし、なんらかの阻害因子が働けば、その個体は、奇形、もしくは死となる。

これと同じ事が、精神発達でも言えるのではないか。

精神発達において、モルフォゲンに相当するのが、親の愛情である。
愛情という外部因子が、おそらく脳の形成もしくは神経ネットワークの形成に大きく
作用する。愛情によって、脳の機能発達や、受容できる神経物質の種類に差が
現れるように思う。

放射線医学総合研究所の山田真希子主任研究員らが、英科学誌ネイチャー・
コミュニケーションズに大脳の「内側前頭前皮質」と「楔前(せつぜん)部」
が「同情」と深く関わりのあることを突き止めた。
これらの部位は、個人差が大きいらしい。
ということは、遺伝的、または環境的な要因によって、その部位がユニークに
なっているということである。

もし、双子研究などで、遺伝的な要素が少ないことが分かれば、脳と養育環境の
関係性について、なんらかの知見が得られるだろう。
そのときは、愛情と脳の働きについても是非調べて欲しい。

愛情によって、脳の形が変わります とか、備えられる機能が変わりますと
いうことになれば、母親界では、大騒ぎになるだろう。
愛情を軽視する世の中に警鐘を鳴らすためにも、是非そういう研究結果を
期待したいものだ。