あなたの方を向いているよと声を掛けるのが下手な私

時たま出逢う人の中に「あなたの方を向いていますよ~」というメッセージを投げかけるのが上手い人がいる。

たとえば
私が電話を掛けたとき相手が「私も今電話掛けようとしていたところ。」と返してくる
デキる営業マンが「連絡が遅れまして、申し訳ありません」と謝る
友達が「こんなことを話せるのはあなただけ」と言ってくる

どのメッセージも大なり小なり私の心に刺さる。
この類いの言葉、自分にはそもそも言葉にする発想さえない。

なぜなら、私自身この種の言葉を親から掛けてもらったことがないから。

赤ちゃんの私は親にとって、愛おしい存在というより、祖母から認められる手段だった。
母親の目線は常に自分の母親(祖母)に注がれていた。
ただひたすらに祖母に認められたい、愛されたいと願っていた母親は、赤ちゃんの心などまるでないかのように私を扱った。
おしめを換えてもらった、ごはんを食べさせてもらった、あやしてももらった。
けど、それはすべて子育てしているでしょと母が祖母にポージングするためであって、私を愛していたからではなかった。
結果として、私は愛情を知らずに育ち、人としての第一歩「私は愛されている」を感じず大人になった。
そんな私が他人さんに「あなたの方を向いているよ」というメッセージを投げられるはずもない。
そもそも私の人生にそんな体験がなかったのだから。

性別にかかわらずモテる人というのは、「あなたの方を向いているよ」というメッセージを投げるのが上手い人。
つまり元をたどれば、親から十分に愛情をかけてもらった人。
いっぱいもらって充足しているから、他人さんにそれを分け与えることが自然と出来る。

多くの人に求められる人は、他人に分け与えられる愛情を量が圧倒的に多い。
そして人は与えようとする人を好み、奪い取ろうとする人には危機感を抱く。

私は人から愛情をもらおうとばかりしていた。
ただ他人は私に愛情を注ぐ役割ではない。
役割でない人に役割を演じろと要求するのは、相手にとってしんどいこと。
だから私は人にモテない。