息子の就職で母親が引きこもり?に意見

ダイアモンドオンライン 引きこもりするオトナたちシリーズ 第135回
子どもがレールを外れると家族まで崩壊する!?優秀な息子の就職失敗で引きこもりになった母親 より

読んでいて、あれこれ思うことがあったので書いておこう。

--概略

50代前半のA子さんは、2年前まで公務員として医療保険に携わる仕事をしてきた。
その現場で、若者に降りかかる様々な社会のしわ寄せを見てきた。
自分の長男が就職に失敗して、いざ自分の身に同じ現実が降りかかるとそれを受け入れられず、未来への不安が膨らみ、親である自分がうつ状態に。
そんな母親を見て、次男までもが大学を中退。
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おそらくだけどA子さんは、仕事をしていたときは、どこか他人事だと思っていた。
そして心のどこかで就職できないのは、不況のせいもあるけど、-実力がないこと主たる原因じゃないか-と相手を責めていた。
だから優秀な息子達にそんなことは起こるまいとたかをくくっていた。

ところが優秀なはずの息子が就職できない。
A子さんは焦った。そして今まで窓口に来ていた若者を責めていた気持ちを自分に向けた。
自分を責める気持ちが不安という形に変わってA子さんの心を押しつぶす。
病院に行って薬に頼るも、自分を責め続ける気持ちは減らないので、症状が回復しない。
最終的にパチンコ店に就職した長男・うつになった母親を見て、長男と同じ大学に通う次男が未来に希望を見失い大学を中退したのだ。

厳しいことを言うようだが、全てはA子さん夫妻の蒔いた種のように思う。

人は他者を侮蔑していると、他者の状態になったときに自らを侮蔑する。
例えば、一人でお弁当を食べている人を見て「あの子、友達いないんだ。寂しい人」と思う人は、自分が一人でお弁当を食べるときに「私は寂しい子と思われるんじゃないか」という不安に囚われる。

A子さんが就職できないことで心身をきたし、医療窓口に来た若者にやさしい眼差しを向けていたなら、就職に失敗した長男や我が身にもっと温かい気持ちをもてたはずだろう。

A子さんの夫もA子さんを「心が弱いから・・・」と責め立てるのは、夫がA子さんの出来事を他人事として処理し、自分に非がないとたかをくくっているから。

要するにこの家族は、[人の底力や愛の力を信じ支えていくこと]が全くできない人の集まりだったのだ。
評価の対象は、成績、学歴、金銭といった目に見える物だけ。世間にアピールできるものだけ。
心をすくい上げてこなかった罰を喰らったのだ。

A子さんの言葉に出てくる「私が悪いのだけど」「うちの子が悪いのだけど」が象徴するように、この手の人々は誰かに責任を押しつけたがる。それが自分の場合もあれば他人の場合もある。
責任探しは、問題解決にどう繋がるのだろう?

記事の論調として、最後に社会が悪いとか仕組みがないとかいっているけれど、果たしてそうだろうか。
本当に問題としてとりあげるべきは、既定路線から外れた人々に対し、信じてくれる人々のいる支えのある社会の実現ではないだろうか。
それはシステムとかではなく、一人一人が相手に対し愛を持って接する、尊重を持って接する、信頼を持って接する思想の教育だと思う。

確かにシステムが社会の常識を作り、常識が人の思想を支配することもあろう。
しかしシステムは人間が作るものなのだ。
システムに踊らされて思考が後からついてくるお粗末さでは、環境が変わったときにまた齟齬が生じ、その隙間に落ちる弱き者が出てくる。

人を信じ、見守ることほど、その人の力を発揮できるものはない。
それを実行するための精神を培う方法を探す方が、優先される課題のように思う。