ドラマ「相棒」に見る心理テクニック

警視庁の天才警部杉下右京主演のドラマ「相棒」を繰り返し観ています。
その中で頻繁に出てくる二つの台詞に着目したいと思います。

一つ目
犯人とおぼしき人物に一見すると事件とは関係なさそうな細かいことを尋ねるとき
「細かいことが気になる。僕の悪いくせ。」と言う。

二つ目
関係者にアリバイを尋ねるとき
「これは皆さんに聞いているのです。気分を害したなら謝ります。」と言う。

一つ目は、視聴者からみても「?」ということに拘っている。聞かれた方は、ただで
さえ警察に聴取されてるのだから気分が悪いのに、理解できないことを聞かれて
へそを曲げたくなる。
しかし事件を解く鍵があるのだから、杉下としては聞きたい。
で、自分の悪いくせにしてしまうことで、暗に「まぁ、お付き合いくださいよ。」と
促している。
個人のくせと言われてしまっては、面と向かって否定することもはばかられるから
応じざるをえない。
聞かれた側の怒りの矛先を自分から自分のくせに逸らす、巧妙なテクニックだ。

二つ目は、暗黙知とみんな同じという意識と謝罪の効能を利用している。
警察は事件解決のために、動く組織だ。
当然ながら業務は事件の謎を解くための調査ということになる。だからアリバイを
尋ねること自体は自然、と捉えられやすい。
また自分一人だけが特別に聞かれているなら、「疑われるなんて気分が悪い」と思う
だろうが、みんなにしていると言われたら、そっかーと受け入れやすくなるし、
相手が謝ってくれることで気分の悪さも軽減する。
なにげな一言だが、相当いろんな心理テクニックを盛り込んでいるといってもいい。

警察は相手が嫌がることも、時としてしなければならない。
そのときに如何に嫌がる心理障壁を下げるかで、有用な情報を得られるかどうか
が決まるのだ。
杉下が明瞭な頭脳と心理テクニックを駆使して集めた情報で、華麗なる手さばきを
以て事件を解決する・・・これが相棒の醍醐味だ。

人々は日々混沌とした中で生活をしている。
もしかしたら、その混沌を杉下の事件解決のように整理できたらさぞかし爽快で
あろうという望みに転化しながら、我々はドラマを観ているのかもしれない。