イラつかせる言葉と喜ばれる言葉の違いがたった一文字違いということもある
日常で何気なく使われる言葉が、どこか引っかかる時はないだろうか?
よく言われるのが「○○でよろしかったですか?」だ。「よろしいですか?」ではなく、なぜか過去形。
「でもね、決断は今するんです。過去に決断したものを確かめるんじゃない」。その違うぞ感が、心の中の引っかかりとして現れる。
これと同じような引っかかりで、もう少しマイナーな言葉を取り上げてみようと思う。
「○○」を連発する女性
土がむき出しの庭をなんとかしてもらおうと打ち合わせしていたときに出会った私より5つは上の女性。美人で仕事も出来ておちゃめな性格だ。すぐに打ち解けて、いろいろと身の上話をするようになった。
そんなとき彼女は決まって私の話に「そうなんですね」と言う。
初めて言われたときは、その言葉を聞いたことがなかったので、「へぇ~、こういう日本語ってあるんだ!」と聞き流した。ところがその後も連続で「そうなんですね」が続くと、心に黒い渦が巻いてきた。「なんか失礼じゃないか?」。
「そうなんですか?」であれば、”私は初めて聞きました。まだはっきりとは分からないながらも、話の導入部だけはかろうじて理解しましたよ” という謙虚さが垣間見える。それが「そうなんですね」だと、”そんな大したことのない話、この場ですぐ理解できましたからこれで話は終わりましょう” と言っているように感じる。
この高慢ちきさが、「なんか失礼じゃないか?」という黒い渦を巻き起こしたのであろう。
違和感は私だけではなかった
では、これは私固有のものなのか? 調べてみると、文化放送の元アナウンサー梶原さんも違和感を感じていたことが分かった。
bizacademy.nikkei.co.jp
彼は「そうなんですね」を「会話を断ち切る困った表現」としている。
なるほど、確かに「そうなんですね」と言われたら、続ける気は失せる。
今から4年前の発言小町でも取り上げられていた。
相槌の「そうなんですね」って!? : 趣味・教育・教養 : 発言小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
それなりに、違和感を感じている人がいるみたいだ。
ささいな表現に現れる差
「そうなんですね」と「そうなんですか?」
たった一文字違うだけだ。けれどそこには ”もうこの話やめ!” という思いと ”もっとどうなってるか聞きたい!” という正反対のニュアンスが含まれる。
私たちが普段何気なく使っている言葉のセレクトにも、どれくらい相手の話に関心が払われているかが現れている。だからこそ、言葉は丁寧に選ぶ。
ーあの人は何を言っても好かれるのに、私は全然好かれないー
そう思っているとしたら、きっとこれと似たようなことが起きている。人は言ってる内容ではなく、どれくらい関心を払ってくれているか、に興味があるんだから。