俳優にも裸にならなくていい権利ってないんだろうか?

人間にはいろんなタイプがいる。
裸になるのが平気な人、全然平気じゃない人。

鶴瓶さんのように喜んで?裸になる人もいれば、本郷奏多君のようにキスシーンさえ嫌という潔癖症の男優さんも。

しかし、一般的に俳優さんというのは男女問わず裸になるラブシーンを演じなくてはならない。もちろんそれが本人の深く納得するところであればいいが、心を壊すようなことがあっては、問題のような気がする。

松坂桃李君の報道

今朝、俳優の松坂桃李君が性的サービスのないマッサージ店で、眉をひそめる行動をしていると報じられた。この報道が真実であるならば、マッサージ店で働く人が気の毒である。

自分はこういうマッサージをして、人の筋肉をほぐして身体を健康にしてあげたい、と思っているところに、性的快楽を思わせるサービスを求められると、心が折れる。意図せぬ性的なサービスの要求はそれだけで人を疲弊させる、と私は思っている。

だが本論はそこではない。彼がそのような行動に出る理由だ。

今年に入って彼は「娼年」という映画の主人公を演じた。娼年とはその名の通り、娼婦のように自らの性を売り物にする職業である。見てみると分かるが、非常にリアリティーを追求した映画で、演じる方も見る方も途方もなく疲れる。

見るだけで鋭気を吸い取られるということは、演じる側はどれほどの消耗を強いられるのだろう?と思うと、じつに恐ろしい。彼は映画の宣伝で平気な顔をしていたが、かなりの量心を削り取られたのではないか、と思うのだ。

このような難役にチャレンジすることは、彼にとって俳優としての大きな一歩であったには違いないが、心を削る一歩でもあったと想像できる。傷ついた心は少なからず脳に影響を及ぼす。それゆえ、彼の扁桃体や前頭葉はこの難役を経験することによって、多少なりとも変形したと考えられる。

どう変形したかは素人である私には上手く説明できないが、ひと言で言うと「見境なく快楽へ走りがちな脳へと変わった」と言えよう。だからこそ、スポーツウエアで働くマッサージ師にパレオを巻けだの、下半身のきわどい部分を触れだの言い出したのだ。

一度快楽に走りがちな脳になると、どんどんその傾向が強まる。誰かが傷ついた心に寄り添ってやらないと、正常な判断の出来る脳を取り戻せない。となると、これは「いい人との出会い」という万に一つの治療薬に掛けることになる。

俳優とはそこまでしなくてはならないのか?

俳優とはそんな深い傷を負ってまで、表現しなくてはいけない職業なのだろうか。
少なくともその人の度量において、さらけ出せる範囲を調整することはできないのだろうか。

性行為というのは、どんな人でもさらけ出すのに勇気がいる。だから秘め事なのである。秘めることによって、心が傷つくのを防ぐのである。

特に女優さんは一度裸体がスクリーンに出てしまうと、胸がどうだとかくびれがどうだとか、という品評を嫌というほど浴びせられる。身体の造形など、演者の力量とはなにも関係ないところで、何年にもわたって、人に品下しされまくる。

女性にとって身体の性的なフォルムは、非常に繊細なトピックだ。できればそんなトピックは避けたいし、そんなもので善し悪しを決められたくはない。だが職業柄そうもいかないようだ。

だから多くの女性が裸体を晒す。でも同じ女性として、いつも胸が痛い。本当にそうしたかったんだろうか。

給与や待遇だけが権利なのか?

マネージャーがつく、送迎車が用意される、ギャラが幾らだ。
そういう取り決めは、契約書に書いてある。

しかし、多くの俳優の心をエグるであろう、どこまでさらけ出すか、ついては、ほとんど決められていないのではないだろうか。ちゃんとその都度話し合いましょう、というスタイルにはなってないと思う。

むしろ、松坂君のように、「これは難役だけど、一皮むけるチャンスだよ」と周りに説得されて、どこか踏ん切りがつかないけど、やると決めたらやるんだ!と自分を奮い立たせて、無理にその役になりきろうと頑張るのが王道ではないかと勘ぐっている。

この指摘は映画を知らない私が言ってるだけあって、相当的外れなのかもしれない。けど、今回の報道が出たときに真っ先に浮かんだのは、「松坂桃李はヒドい」という責めの気持ちではなく、「松坂桃李大丈夫か」という心配だった。

芸能界は浮き沈みの大きい世界だ。だからこそ、常にチャレンジしていかなくてはいけない。しかしそのチャレンジは心の力量に沿ったものだろうか。ちゃんと心がついていける程度のものだろうか。
心を殺して無理をするのと、難しいことに挑んで新しい自分を発掘するのはワケが違う。

頑張るのは、心の尊厳が保たれた上での話だ。
こんな私個人の杞憂、外れて欲しいが、もし想像が当たっているなら、早々に彼は専門家に助けを求める必要がある。



参考記事 心の傷が脳に与える影響について
www.kokorononagare.com