悩み-お金がないと医療が受けられない-

日本は健康保険制度があるので、多額の負担をせずに医療が受けられる。
ただし、精神医療の現場ではどうなんだろう?

一患者として治療を通して、健康保険でカバーできる範囲に制限があるのだと

痛感した。
精神病と判断されると、最初に投薬を受ける。軽い精神安定剤に始まって、
症状に合わせた薬を処方される。
患者は薬の副作用に苦しむ。一日中ぼーっとしたり、吐き気がする。
そして間隔をあけて、投与する薬の種類が変わる。

精神病の原因が体内物質の減少によるものだった場合は、不足した物質を
補えばよいのだから、投薬は薬の種類さえ合致すれば劇的に快方へ向かうだろう。
その一方、原因がストレスによるものだったとしたら、投薬では改善しない。
ということで、治療はカウンセリングも併用するという運びになる。

ところがカウンセリングは自由診療扱いがほとんどで、一時間数千円から
数万円かかる。
もちろん、市などが提供するカウンセリングサービスには無料の所もあるが
治療としてよりも、精神患者を増やさないための予防を目的にしており、受ける
回数も制限されている。

私が話をしたカウンセラーは、よく勉強をされており、技量不足という人はいなかった。
が、しかし無料であっても1時間1万円であっても、傾聴以上ができるカウンセラー
はいなかった。

精神病を患う人の中には、自分を認めてもらう機会が極端に少なく、自己否定を
繰り返すことで発症してしまう人がいる。その人にとっては、自分の言葉を聴き、
受け止めてくれるカウンセリングは大変に貴重な場だと思う。
だから、カウンセリングが終了すると心の中が満たされ、元気を取り戻したように
感じる。

しかし、時間が経つとまた元の自分に戻って自己否定を始める。そしてカウンセリング
に行く。これを繰り返して、コップ(自分)から水(ストレスによる症状)があふれ出すのを
辛うじて、止める。
果たして、これは治療なのだろうか?
私には対処療法にしか見えない。

治療とは、自己否定をする原因を見つけ出し、自己否定という水を空っぽにすることだ。
そのために、自己否定を正面から見つめ、自分がしている否定事項は否定する
ほど邪悪な物なのかを考えることが大切だろう。
自分の力で考えて、否定事項だと思っていた物が、実は大したことのない思いこみだ
と気付いたら、そのとき水が空っぽになる。
<ReBorn>だ。

ところが、ReBornに到達するために一緒に考えることのできるカウンセラーは
ごくわずかだ。
こういうカウンセラーは、自身がReBornした経験を持ち、且つその経験を帰納し、
さらにクライアントの状況によって演繹できる応用力を持つ。
哲学者と同等なまでに、深く考えられる考察力が求められるのだ。

このようなカウンセラーはごくわずかなだけに、クライアントが治療を受ける機会も
限られているし、ReBornしたということは既成の概念に囚われない人間なので
金儲けの仕組みに疎く、従ってコスト削減とか効率から外れてしまい、その結果
少数の患者を高額の治療費で診ることになる。(カウンセラーが納得いく治療を
しようとすると、一人あたりにかける時間が長くなる。病院経営の資金や自身の生活
費を稼ぐことも必要なので、必然的にクライアント一人あたりの治療費は高くなる。)

だから患者は質の良い治療を受けようとすれば、高額な費用負担を強いられ、
そこそこの治療を受ければ、またすぐにコップから水があふれる。
どうすれば、安心して心の治療ができるのだろうか?

金が有ればいい医療が受けられる とはまさにアメリカ式ではなかろうか?

まだまだ精神医療に関して日本は後進国のように思う。
精神には大まかなルールはあれども、変化に富んでおり、扱いが難しい。
なのに、治療は画一的(傾聴に留まった治療行為)に行われる。
この矛盾を国家として理解し、我々日本人に足りないのは、考える力であり
アイディンティティであり、孤独を認めることであると啓蒙活動せねば、未来
さらに多くの患者が病院にあふれ、その人間は行き場を失うこととなるだろう。