被災してない人が自分の大変さをアピールする謎

京都大防災研究所の解析結果によると、東日本大震災本震後15分間で、約80個
の地震が誘発されていたそうな。
北は東北から、南は九州まで、日本全国の地面が揺れた。

関東近郊の人も、比較的大きな揺れにビビッたに違いない。

ニュースで九段会館の屋根が崩れて犠牲者が出たことから、自分たちも大きな
揺れを経験した被災者だと感じたろう。
そんな中、各報道機関がヘリを飛ばして、東北の沿岸沿いの映像を流す。
事態を知った瞬間、被害の深刻さに口をつぐむ。
にも関わらず、地震から時を経ると、被害の大きかった地方の人に対して、被害を
被らなかった首都圏の人が、地震で大変な思いをしたというストーリを語るという不思議。
ちょっと興味があるので、考えてみよう。

◇体験記憶と伝聞記憶
人は自分の体験したことは、深く記憶に残り、見聞きしたことは、浅く記憶に残る。
特に同じタイミングで同じような体験をした場合、相手の話より自分の体験の方が
より鮮明で深く記憶に刻み込まれる。
鮮明で深いだけに、なにかのきっかけで、記憶が突っつかれたら、まっ先に
出てくるのは自分の体験。その時、相手の大変さは頭から吹っ飛んでいる。
これは、人間の性質であるから、避けようもない。

◇精神成長に伴う目線の変化
人は、元々自分に目が向いている。生まれたての赤ちゃんが、隣の赤ちゃんに
お乳を譲らないのは、隣の赤ちゃんという存在に気がついていないからだ。
成長するに従い、人の形成した社会という中で暮らし、自分だけ見ていては立ち
ゆかなくなる経験を通して、他人を見るという成長をする。
その内、何かをするためには、他人の力が必要だと気がつき、他人と関係性を
構築するために、礼節を守る・配慮する・助け合いをするようになる。
そうやって、自分に向いていた目が他人に向くようになる。

記憶の深さと元来持つ人間の性質からいうと、常に自分のことばかりが口から
出てしまうのは、当然の成り行き。
残念ながら、他人に目けられるほど精神成長した人が少ないのもまた事実。

◇子供っぽい人間に対して被災者はどうしたいいか
それでも、被災して心が傷ついている人から見れば、「私の気持ちを解って
くれないのね。」「慰めて欲しいと一瞬思った自分がバカだった。」と落ち込んだり、
人間不信になることもあろう。
そういうときは、相手を精神的に成長していない子供だと思って、聞き流しましょう。
子供だったら、主観的なことや自己中心的なことを言ってきても、まぁ子供だしね
と諦められるでしょう?

大人の形をしているから精神的に大人ではありません。
見た目に囚われて、期待すると、すり減るのは自分です。
大切なのは自分の心を守ること。
精神的に幼い大人からは離れて、大人づきあいできる大人と繋がりましょう。
つきあうのに不適切な人と距離を置くのもまた、自分への労り。