心理関係の仕事に就く前に

自然科学を前にすると、ものすごい厳しい世界が待っている。
理論からずれると、目の前の対象はうんともすんとも言ってくれない。
それをなんとか反応させるために、膨大な資料を読み、実験を繰り返す。
これが理系の職の形。

研究・開発の人は漏れなくこの壁にぶち当たり乗り越えていく。

翻って、文系というのは、曖昧さを含む。

フランス文学の解釈がAであってもBであっても文学は文学。

心理学というのは、文系に分類される学問。
私の出身校では、人文カテゴリー。
心理学は対人(たいひと)としているために、一部の忍耐強い患者には効果があるのかないのかわかりにくい面があり、またそれでも職業として成り立っている。
あるカウンセラーと面接して効果がなかったから、無料ということはない。

それが厳しさを曖昧にしている。

精神療法、カウンセリングとは時として人の命に関わるシビアな世界だ。
なのにその評価方法を巡っては、曖昧さが残り、「カウンセラーとの相性よ」という言葉で処理されがちだ。
もちろん人同士なら相性があるのは致し方ないが、本当に相性なのかカウンセラーの実力不足なのか明確に判別されなくてはいけない。
でも実際判別するための手法がない。

だからこそ、心理学でプロを目指す前に、自然科学で厳しさを体験するのよいと思う。
全然上手くいかないお手上げで泣きそうな状況をくそっ!と乗り越える経験を通して、人の心を治していく難しさと壁を体感し、超えたときの喜びを体得していく。

おそらく心理学は何処まで行っても、「ハイ、終わり」の見えてこない深くて遠い世界なのだ。
だからこそ今最善を尽くさねば、目の前の患者を救うことは出来ない。
患者さんによっては、嫌われたくない一心で「ちょっと良くなった気がします」といってしまう。
でもそれじゃいけない。そんなこと言わせちゃいけない。
患者が本心から「良くなりました」と言えるように、サポートする側は厳しさを持って臨まないといけないと思います。