なぜ、オウム返しは有効な手段なのか?

「あなたは、人の心が分かるだろうか?」
と尋ねられたら、ほとんどの人は「分からない」と答えるだろう。

そう答える人が円滑にコミュニケーションを図るには、相手の言ったことをそのまんま返す「オウム返し」がいい、と習う。
「人間にはミラーニューロンというのがあってね、自分と同じことをしている相手にはいい印象を持つんだよ」と言われ、信じている。
けど、その理屈について、どれほどの人が納得しているだろうか。

納得なきまま、型をまねるというのは、どうもスッキリしない。
あ!コレという納得の上に、スキル「オウム返し」を使ってみてはどうだろう?

私が遭遇した例

あるとき、トイレのレバー「大」「小」を使い分けると水道代の節約になる、という記事を見かけた。
我が家は自動洗浄なので、必然的にすべてが「大」。しかし来年から40年ぶりに水道料金が値上げになるみたいだし、これは使い分けた方がよさそう。ということで便器のカタログを調べて、型番を特定し、大は5L、小は3.8Lの水を使用する、と突き止めた。

かかった時間は約15分。けっこう面倒くさかった。

夜になって配偶者が帰宅すると、私はさっそく「トイレの大と小を使い分けると、1.2Lも節約になるんだって!」と切り出した。反応は…
「ふーん。オレは前から小のボタン押してるよ」だった。
その瞬間の私の気持ち (なんだよ。もっとなんか反応あるだろ!せっかく調べたのに、こいつに話するんじゃなかった。なにをやっても報われない。配偶者いらね。)

これが別の応対だった場合、後に湧く心模様はまったくの別物となる。
私「トイレの大と小を使い分けると、1.2Lも節約になるんだって!」
相手「へぇ~、そうなんだ。ちゃんと調べたんだねっ!」
その瞬間、私の気持ちは(あぁ、調べた苦労分かってくれた!嬉しい。やっぱこの人に話すといいことあるよね。配偶者絶対必要。)

この二つを見ると、後者の方が圧倒的に好印象に思う。トイレの水をどれくらい使うのか、という取るに足らない話題で、結びつきを強めている。
ただし、これにはリスクが伴う。

そのリスクとは「的外れ」。
もし私の心の中に(けっこう面倒くさかった)という思いがなければ、「ちゃんと調べたんだねっ!」は(なにいってんの?)という不快につながる。取りようによっては(君って暇だね。そんなトイレの水の量なんてわざわざ調べたんだ)という嫌みにすらなる。
だから踏み込んだ返事というのは、よーくよーく見定めないと、思わぬ地雷となる。

そこでオウム返しの登場だ!

万能な薬「オウム返し」

私「トイレの大と小を使い分けると、1.2Lも節約になるんだって!」
相手「えっ!1.2Lも節約!!」

読者のみなさんは、どう感じられただろうか。少なくとも私は(あっ、受け取られた感あるな。)
ピンポイントにイイ!という感じではないけど、なんかいい感じに思う。話の分かるやつだなと思う。

とりあえず「オウム返し」

しょせん人の気持ちなんて、分からない。だから下手に踏み込んで的の外れた解を言うくらいなら、オウム返しで平均点を稼ごう。
オウム返しはある意味なにも意見してないから相手の勘に触るといったことがない。そして、「君の話はちゃんと聞いたよ~」というメッセージを確実に返せる。

実は話を切り出す側のほとんどは(私を分かってほしい)から話かける。内容よりも(分かってほしい)がダントツ優先。そして分かってほしい内容は、十人いれば十人とも異なる。つまり人の心を見抜く達人でもない限り、ピンポイントで分かってほしいことを口にはできない。
そこで伝家の宝刀「オウム返し」が生きてくるわけ。

ということでもっとも難なく(聞いてますよ~)を伝えるのは「オウム返し」。下手な理解を示すよりかは、ずっと使える。まずはトライしてみて!