あなたは、話をよく聞いてもらえる方?もらえない方?
ほとんどの人は、聞いてもらってるようで、もらっていない、といった半端な感覚をお持ちだと思う。
なぜ注意深く聞いてもらえないのか、なぜ聞いてあげてるのに聞いてくれないのか。そんな会話にまつわる疑問を解消する手立てを知りたい人向けのコンテンツです。
読む前と読んだ後で、会話に対する向き合い方が変わります。嫌みなどの攻撃から上手く逃れられるようになります。
今、会話に苦しんでるなら、どう話を運んでよいか分からないなら、一度目を通してみてください。
会話を分析する
まずは、いつもの会話のおさらいをしてみる。
- 友達のAちゃんが、「私ってブスだから~」と口にした。なので「そんなことないよ。○○(身体のパーツ)とかかわいいじゃん!」と返した。
- 近所のBさんが、「聞いて聞いて、この前Cさん家のご主人、若い子と手をつなぎながら歩いてたわよ」と切り出したので「うわ~、それって不倫じゃない?」と答えた。
- 同級生のDちゃんが「アタシってさぁ~、トマト食べられない人じゃん!」と言ってきたので、「へぇ~そうなんだ。私は好きだよ、トマト」と返事した。
- F課長が「明日が期日なのに、まだ草案もできてないんか!」と発破をかけてきたので、「すいません、急いでやります」と言った。
- 「ちょっとご主人、どこにお勤めなの?どれくらいの年収なの?」と尋ねられたので、正直に答えて後悔した。
こんな風に、分かりきった答えを返しがちだ。予想範囲に収まった答えのせいで、もっと聞きたいと思わすこともできなければ、聞いてて楽しいと感じさせることもできない。話した方もさぞかし、つまらんなぁ~と思っていることだろう。
ありがちな会話からの脱却
では、なぜそのような会話になったのだろう。
一番の理由は、「自分の意見」を返してしまったから。
はっ?!意見を言うのはよくないの?と思うかもしれない。しかし相手は分かって欲しくて話したのに、分かってもらえなかったばかりか、「自分の意見」を押しつけられた。望んだものと違うものを渡されたという点で釈然としないのだ。
もし相手の望んだものを返してあげたいと思うなら、相手の望みをしっかり掴んでから、返す。すなわち、「自分のいいたいこと」は脇に置いて、「相手の言いたそうなこと」を言葉にしてみる。
相手の意図を汲む
とはいえ、いきなり「相手の言いたそうなこと」を言うのはハードルが高い。そこで、相手の本心を考えてみる。
- 「ブスだから~」の裏には、私は美人だと勘違いしてない謙虚さを持っていたい + かといって、ブスだとは認めたくない、思いがある。
- 不倫というヘンな景色を目の当たりにして、心がざわついている。気持ちを吐き出したい。
- 特色のない自分だけど、せめて食べ物の好き嫌いで注目を集めたい。
- ちゃんと期限までにやってくれるのか~、と心配。
- 常に人より上か下かが判らないと安心できない。
これと先ほどの例を付き合わせてみよう。
- 「そんなことないよ」と否定してくれてるけど、ブスだとは認めたくない思いはぬぐい去れない
- 「それって不倫じゃない!」と言ってくれたけど、ざわついた心にはノータッチ
- トマトの話はしてくれたけど、私には注目してくれてない
- 「やります」だけで、心配してるということを理解してくれてない
- 聞きたいことは聞けたけど、だからといってこれから先もずっと安心できる保障はない
返した言葉がぜんぜん本心に触れていないことがお分かりいただけるだろうか。
こんな返し方では相手の分かって欲しいはちっとも満たせてはいない。だからこそ、こちらの返事はさっと受け流されるんだ。
新たな考えの導入
そこで、本心を掴むために、自分の役割について次のように捉えなおしてみる。
自身を上下に穴の開いた筒に見立てる。相手は私に話しかけ、私というフィルターを通じて、①自尊心の向上②やる気アップ③分かってもらえる感覚の降臨、のいずれかを手にしたいと思っている。
なので私自身は意見を持たず、相手の言いたいことを研ぎ澄ますフィルターとして働く。「我」を捨て、ただの筒として居ることで、相手の思考の邪魔をすることなくいられる。
フィルターの域を出ずに踏ん張れれば、①~③の効果がほどよく発揮され、相手は私に話すことで心が元気になり、もっと話したいと思うようになる。
そして、私の答えに注意深く耳を傾けるようになる。
フィルターになるために必要な視点
では、ここで「我」を捨て、フィルターになるために必要な視点を取り入れることにする。
それが以下に紹介する3つとなる。
一つ目
相手がどうしたがっているか
二つ目
どうやったら相手が伸びるか(もしくは心躍るか)
三つ目
どうやったら、相手の心が落ち着くか
このいずれかの視点を利用して、相手の本心を掴んでみる。
実際の例でやってみよう。
【1.「私ってブスだから~」と口にした友達Aちゃん】
本心は、私は美人だと勘違いしていない謙虚さを持っていたい + かといって、ブスだとは認めたくない。
自分をただのフィルターだと思って、3つの視点で考えてみる。
これは二つ目の「どうやったら相手が伸びるか」が使えそうだ。
「つけあがらず謙虚にいるのはいいと思う。でも私はAちゃんには輝いてて欲しいから、どうせ口にするなら、自分のチャームポイントを言って欲しいな」
このとき、自分の意見を言ってるようで言っていないのを感じるだろうか。「輝いていて欲しい」と言ってるものの、ただの希望にとどめている。
何かを押しつけることなく、何事もねじ曲げない、そういう手出しを一切しない、という中で、ただただ相手を尊重する。これが、耳を傾けたくなる話の持っていき方。
他の例も考えてみよう
せっかくなので、別の例でも考えてみよう。
【2.不倫の噂話をしている近所のBさん】
本心は不倫というヘンな景色を目の当たりにして、心がざわついている。
使うフィルターは、三つ目「どうやったら相手の心が落ち着くか」にしよう。
「確かにそういうの見ちゃうと、心がざわつきますよね。でもあまり口外しない方が品良くありません?」
【3.トマト食べられない宣言のDちゃん】
本心は特色のない自分だけど、せめて食べ物の好き嫌いで注目を集めたい。
使うフィルターは、一つ目「相手はどうしたがっているか」にしよう。
「トマトが好きでも嫌いでも、Dちゃんはいい子だと思うよ。」
【4.仕事が終わらないんじゃないか、と心配しているF課長】
本心はちゃんと期限までにやってくれるのか~。
使うフィルターは、三つ目「どうしたら相手の心が落ち着くか」にしよう。
「間に合うか心配なさるのはごもっともです。5時までに第一報を出しますので、それをみて手直しが必要ならおっしゃってください。今日は目いっぱい残業します。」
【5.詮索好きの人】
本心は常に人より上か下かが判らないと安心できない。
使うフィルターは、三つ目「どうしたら相手の心が落ち着くか」にしよう。
「夫がどんな人か分からないとお付き合いできませんか?せっかく知り合ったんですから、そういうの抜きでいきましょうよ。」
全部が全部、ピンとくるものではないかもしれない。ただ、いつもの返事より、ほっとしたんじゃないだろうか。
フィルターになれば攻撃を逃れられる理由
5.を見て気づいた人がいるかもしれないが、実はこの方法は他人からの攻撃を避ける効果もある。
不快なことを言う人は、その人の中に不快な言葉の元となる腐った感情を抱えている。その感情を投げつける相手である「我」を先に捨ててしまうことによって、相手からの攻撃を食らわずにすむ。
友人に「オマエの奥さん、いつみてもブスだなぁ~」と言われたとしたら
普通なら、失礼な!という怒りが湧いてくる。
しかし、すでに「我」がないので、すぐに③どうやったら、相手の心が落ち着くかを考え、「どうしたんだ、オマエらしくもない。気使いどっかに忘れてきちゃったか?」と返せる。
傷つけるようなことを言ったのに、こんな優しい言葉を返されたら、重ねて攻撃することが難しくなる。
虚しいを幸せな時間に変えるために
こんな攻撃をも防いでくれるこの考え方、どうだろう?あなたの会話に変化をもたらしてくれそうだろうか。
コミュニケーションを学ぶ機会をもたない我々は、「人の話を聞きましょう」と言われれば素直に耳を傾け、「自分の意見を言いましょう」と言われれば述べてきた。でもそれだけでは十二分に会話をしたという満足にはほど遠い。なぜなら相手と自分の分かって欲しい、に触れていないから。
分かることなくして話すのはただの作業。話を受け流す方も、受け流される方も、虚しい。その虚しさを繰り返さないためにも、まずは自分がフィルターとなって、相手の分かって欲しいを分かってあげようではないか。