お見合いで感じる言葉の違和感

最近では、仲人さんや結婚相談所経営者が、これからお見合いをする人に向けて、お見合いの現場で起こっていることを、わかりやすく文章にして公開してくれている。お見合いをしたことのない人も、自身のお見合い体験しか知らない人も、興味深く読んでいると思う。

私もその一人だ。

読んでいると、ほぉ~そんなこともあるのか、こんなビックリな展開もあるのか、と驚かされる。とても面白い。しかし、何度読んでも気になってしまう点がある。

それが言葉使いだ。一般の感覚からズレている気がしてならない。お見合い市場は、世間とは相場が違うんだろうか?

どういう定義だ?その言葉

お見合いでよく使われる言葉の一つに「デート」というのがある。

初顔合わせを「デート」という場合もあれば、初顔合わせの後にもう一度会うことを「デート」ということもある。

この「デート」という言葉には甘い響きがある。好きな人と会うために設けられた特別な機会。「デート」というだけでワクワクするし、何を着ていこうか、何を話そうか、どんなものを食べようか、で頭の中がパンクしてしまう。

そこで「お見合い」にそのような感情の高ぶりがあるのか考えてみると、まったくもってない。「デート」と称されるものは、まずどんな相手かを知るための機会であって、いうなれば情報収集の場。相手への好意が芽生えていないため、言葉のセレクトにめちゃくちゃ違和感がある。

他にも、「交際」という言葉にひっかかりを感じる。

「交際」というのは、好きな者同士が互いの意思を確かめ合って、「付き合いましょうね」という合意が取れたときに成立する。お互いがお互いを好いているというのが分かった上で、二人だけの時間をもつ。

ところがお見合いにおける「交際」とは、相手がどんな人か分からないので、何回か顔を合わせることを指す。いうなれば、判断の途中であって、お互いがお互いを好いている確証はどこにもない。ちなみに、「つきあう」ことが決まった際には、接頭に「真剣」という言葉をつけて、「真剣交際」と言うらしい。

「真剣交際」という言葉はおそらくお見合いの世界でだけ使われる独特な言葉なのだろう。なんだかピンとこない。私が知っているのは、「○○さんとは真剣にお付き合いしています」とご両親に報告するときくらいなんだが。

言葉に違和感を感じる理由

どう言葉を使おうが、それは個人の自由だと分かっていながらも、なぜ言葉に違和感を抱いてしまうのだろう。

それは私が思うに、無理にピンク色に染めようとしている気がするから、である。

ピンクとは「恋心」を表す色。
お見合いでも、最終的に「恋」をして成婚するんだから、そのイメージを彷彿とさせる言葉を先行して織り交ぜておこーね、という意図が見え隠れする。

かりに、会った人全員が「恋」したくなるほど素敵な人たちばかりなら、初っぱなから「恋心」が生まれるので、その言葉であってもいいと思う。
が、実際は、「恋」とはほど遠い相手と会い、”こんな相手じゃ、無理” と毒づくのである。ピンク色と”毒づく”の間に漂うギャップ。それに違和感を抱かざるを得ないから、ピンク色の言葉はちょっと…なのである。

言葉と現実の差を埋める言葉遣いの方がいいんじゃないか

打率の低い現実に沿って、現実なりの色をつけた言葉を用意してあげればいいんじゃないか。それも優しさの一つだろう。

二度と会いたくない相手と「デート」したと思うと、うぎゃ~、と思うが、二度と会いたくない相手と「面接」したと思えば、「まぁ、そんなんもんだよね」と心がザワつかずに済む。「面接」が就職したときみたいでイヤだというのなら、「顔合わせ」とか「検討機会」とか「情報交換」とか、なるべく「恋」の要素を排した言葉がいいと思う。

「交際」についても、「熟慮期間」とか「すりあわせ」とかでいいんじゃないだろうか。そして「真剣交際」を「交際」に変えれば、世間一般とのズレも解消できる。

目的に沿った言葉選びを

お見合いを申し込む人は、恋愛をする人と違って、”早く結婚しなきゃ”、”私を振った交際相手を見返したい”、という気持ちで門をくぐる。目的はきわめて明確で、結婚という成果物を手にすること。

その願いを叶えるのが相談所の役目である。結婚したい人とさせたい人がタックを組んで目的を達成するために邁進する。それはまるで一大プロジェクトの様相である。ならば、目的の人に出会えるまでは、ピンク色の要素を取り去って、精神負担の少ない要素を入れ込んであげてはどうだろう。

そういう気づかいもまた地味に大切だと思う。

やはり「デート」や「交際」はいつか出会える「恋」の相手のために大切に取っておきたい。