新型うつ病について考える

NHKの夕方の番組で取り扱っていた「新型うつ」について、思いついたことを書いて
みようと思う。

新型うつとは、自分の苦手な場面ではうつの症状が出る一方、それ以外の場面では

健康的という症状である。
遊びには行けるのに、仕事はできないので、「怠けているのでは?」と、周囲の
理解が得にくい。

番組の中で、ある患者さんのケースを取り上げていた。
幼いときから親にたくさんの習い事をするよう教育された彼女は、母親の言うとおり
にしていれば「いい子」でいられると信じて生きてきた。
ところが社会に出ると、上司の命令を遂行しようとした際、上司の求めるレベル
に達することが出来ず、否定される場面に出くわした。
今まで「いい子」だった自分が、突然「ダメな子」と言われてすんなり受け入れられない。
そこで、「上司が悪いんだ」と思いこむことで自分の中でつじつまを合わせるように
なった。

しかし、会社という組織で働く以上、命令系統に従わざる得ない。
心の中では上司が悪いのに、実社会では上司が正しい。
その矛盾が膨らんでいって、会社でうつという症状となって出た。

そんな彼女の立ち直るきっかけは、カウンセラーに勧められた親子対話をすること
だった。
ある日彼女はコンビニで買い物をしたら、おつりが間違えていた。
その時、コンビニの店員が謝らなかったことに腹を立て、ノートに「万引きでも
してやろうカナ・・・」と書いた。
そのノートを見た母親が「同じ気持ちになったことがある」と告げたことで、彼女は
「母親は完璧ではない」ということに気がついた。

今まで人生には完璧しかない、だから自分も完璧でいなくっちゃと必死で思って
きたけど、その手本としていた母親も”間違うことのある人間”だった。
人間は間違えるものという真理を掴んだ彼女は以後、間違いを指摘されたり
否定の言葉を言われた時、何を間違えていると言われているのか冷静に受け止め
られるようになった。

ここで考える重要な点は、完璧を求めすぎる事による弊害である。
純粋な子供は、親が喜ぶならと必死に自分の気持ちを殺して親の命令に従う。
親が子に課した”完璧な人生を歩むこと”は、完璧レールから一歩も踏み外す
ことを許さない。
だけど、人間って間違えるもんでしょう。
成長するというのは、人間の正しい面も間違った面も対応できるように心を
育てることを言うのです。
”間違えることは、人生の中にナイ”といった不自然な思想を持つと、必然的に
実世界との乖離を生みます。
その乖離が全て心の中に澱として溜まって身体症状に出る。

対応できるようになるためには、お手本が必要です。
お手本として、親が間違えたときの対処方法を自ら子供に見せることは、最も有効
な学習の機会です。

自分の失敗話をすると、周りの人と仲良くなれます。
それは、失敗という間違った面を見せることで、相手に間違えても大丈夫という
メッセージになるのです。
そうすればリラックスして人と向き合えます。

完璧はエスカレートします。上には上がいて、どこまで完璧を目指しても、もう十分
というところには到達しない。
そんな人生を煽るような生き方をするより、失敗もするけど反省をして進むよと
いった力を抜いた生き方の方が、現実と合っています。

カウンセラーは、新型うつの原因は様々であり、特定は出来ないと語っていました。
色んな人の色んな人生があるので、「原因はコレ!」と一概に言えないと思います。
ただ私は、心の澱の溜まり方とその量が、うつになるかならないかの境目だと
考えています。