流れを阻害せずに話す

2日前に薬師丸ひろ子さん主演の「こうのとりのゆりかご」というドラマを見た。

助産師である薬師丸さんが赤ちゃんポストに我が子を預けようとした母親にかける言葉が、実にすばらしかった。

「赤ちゃんをここまで連れてきてくれたの」

「寒かったでしょう?ほらこんなに手が冷たい」
「困っていることはない?話を聴かせてくれないかしら?」
「一緒に何が出来るか考えていこう」

我が子を手放す母親は、それはそれは後ろめたい気持ちでいっぱいだ。
子を手放そうとしている自分を許せず、かといって子を育てる有効な手立てを見つけられず、誰にも相談できないで、世間からは批判されると怯えている。
そんなとき、第三者がまた批判的なことを口にしたら、たちまち気持ちが崩れてしまうだろう。
ぎりぎりでとどまって、赤ちゃんを守りたいという一心で病院にやってきた。その気持ちを薬師丸さんはよく汲んでいる。

相手が言葉に出さなくても、その痛いまでの気持ちを感じ取り、辛い気持ちに寄り添うことの大切さをあらためてこのドラマから学んだ。
言葉というのは、誰かを貶めるためではなく救うためにあるだと思う。
私がどう思うかではなく、相手がどう思っているか、に焦点を当てることは、生半可な気持ちではできない。
本気で、相手を見る、理解しようと努めることがあってこその業だ。
その業、私も頑張って手に入れてみたい。