情熱大陸のディレクターはどうすればよかったのか?

ニュースで、情熱大陸のディレクター(以下 D)が番組プロデューサー(以下 P)が吉田沙保里選手に関して、許しがたい発言をしたので抗議のメールを送り、番組を降りたと報じられた。

会話を読む限り、Pに問題はありそうだ。だがPの下で働くスタッフは面と向かって「Pが間違っている」とは言えない。お茶を濁して「こんな風なことがあったようですね」とマイルドにごまかしてる。

いつの時代も人を大切に出来る人間が割を食う。悪貨が良貨を駆逐する世の中でいいんだろうか?
Dの振る舞いがもう少し戦略的であれば、良貨が勝利にしたのに、と思う。

PとDの決定的違い

長く取材対象(この場合は吉田選手)に張り付いていれば、親近感が湧くだろうし思い入れも強くなる。しかし今回の場合、単にDが長期密着していたから、とだけは言い切れない。
Dは取材対象一人一人を人として大切に思う人だったのではないだろうか?

それに比べてPはあくまでも取材対象は視聴率を取るためのモノ扱い。だから作家さんが「見れば見るほど(吉田選手が)可愛く見えてきましたよ」と言ったのに対し、Pは「じゃあB(作家の名前)さん、イケるんですか~?」という言葉を返した。
これは吉田選手を人としてではなく、女性というモノとしてイケる対象かイケない対象か?と見る見方であり、大変無礼な対応だ。

でもPはそのことにさえ気づいていない。
なんといっても取材対象はモノ。モノに心がある、敬意を払うべき、といった良心のカケラがないんだから。

Dは人として吉田選手を見、Pはモノとして吉田選手を見た。この決定的違いが、今回の事件を生んだのだろう。

Dが取れた戦略は?

きっとDは心優しい人だ。誰にでも敬意を払い、取材させてもらうという低姿勢の持ち主だと思う。けどやや感情に流されやすく、また自分の価値観の延長に他人もいて欲しいタイプ。当然ながら、Pとは水と油。

だからこそPのような合わない人物と出会ってしまったときは、一にも二にも感情に流されることなく、場を見極める目を持つ努力を惜しまないことだ。
自分の良心で悪貨を駆逐する気概を持つ。
そうすれば、戦略が見えてくる。

今回の場合、もし吉田選手の耳にこの話が入れば明らかに彼女は傷つき、今後番組に協力することはないだろう。そうなれば継続取材は出来なくなり、番組の運営に影響が出るだけでなく、会社にも迷惑になる。
そういう人間がプロデューサーの器なのか。と責める。

これならば、「会社を守るため」という大義も立つため、味方を得やすい。スタッフはプロデューサーについてるように見えて、番組についている。会社は一人のプロデューサーを大事にするより、番組や会社を大事にする。
誰が誰を大事にしているかを見極めれば、本当は人をモノのように扱うキタナイ心を持つPを訴追できるのではないだろうか。

心優しいDには負けて欲しくなかった。優しい人がいない現場は殺伐とするだろう。
人を思う気持ちがある人が作るからこそ、取材対象は心を許し意外な一面を見せてくれる。

いい番組なのだから、心ある人たちで作り上げていって欲しい、と思う。