「ようやく分かったか、バーカ」の意味を考える

受け持っている患者さんが、パワハラぎみの上司に対して、謙虚な姿勢を見せたところ「ようやく分かったか、バーカ」と返されたことを嘆いていた。
本人としては、反省したのにこの返しはないんじゃない?と思ったらしい。

では、どうすればこの上司にまともな返しをさせられただろう?

「バーカ」とののしられた理由

件の上司は、患者さんの言ってることが理解できずイライラしていた。そのときの上司の気持ちを計ってみる。

「Aさん(患者さんの名前)、何を言いたいんかさっぱり分からんなぁ」
「どう話せば、オレの言ってることが伝わるんやろ?」
「オレ、Aさんを育てる自信ないわ。ほんま辞めたい」

おそらく上司も話の通じないAさんを前に、「どうしたらいいんだ、オレ?」とひどく困惑していたに違いない。そこへ来て、的外れな報告をするAさんを見て、思わずきつい言葉を言ってしまった。

だとしたら、上司がひどい人格だと責める前に、この「ひどく困惑していた」気持ちに焦点を当ててみる。

たとえば、「私の理解が追いつかないばかりに、気苦労をおかけして、申し訳ありません。まだ経験が浅く、○○さん(上司の名前)の言っていることを飲み込めずにいるのです。もし○○さんが物事を的確に理解するコツを一つ挙げるとすれば、何でしょうか?それからやってみます。」と言えばどうだろう?

上司は「困惑している」気持ちを受け取られたばかりか、自分のやり方を真似てくれるという自尊心のくすぐりを受けるので、卑下しにくい。
理由は、相手が自分を敬ってるのに卑下したら、間接的に自分を自分でさげすんだことになるからだ。

でもここまで相手のことを考え抜けなかったから「バーカ」と言われてしまった。相手への踏み込みが浅かったのだ。

同じ被害に遭わないためにバランスを崩しにかかる

中途半端な謙虚姿勢は、相手に要らぬ勘ぐりを抱かせる。「謙虚な姿勢を見せておくことで、これ以上の攻撃を避けようとしてないか?」と。

防御は不信を生むだけで、解決や成長にはつながらない。だからもし、防御を目的とした謙虚なら、期待するほどの効果は得られないと心得なければならない。
相手のことを考えるなら、徹頭徹尾本気で考える。それでこそ、相手にぐぅの根も出させない策略となり得る。

仕事で成果を出すには、経験や知恵が必要だ。一朝一夕になんとかなるものではない。しかし人を思うことなら、コツさえ掴めば今からでも出来る。
パワハラで部下を鬱にする上司と、鬱にされる部下は、どちらも「人を思うこと」が下手くそ。一方が思い通りに操ろうとして、一方が周りに合わせようとしている。その凹凸具合はぴったり。

だから、その嵌合(かんごう)を外してやる。わざとこちらの凹の形を変える。
相手を思うということは、「凹みをなくしてロにする」こと。凹みがなくちゃ凸の相手は手も足も出ない。

ということで、へこみを無くするために、自分があーされた・こうされたと思っている自分へ向けた被害者意識を、あの上司はなぜあんなこと言ったんだろうという相手に向けた課題意識へと変えていく。
やられっぱなしになるなよ!