俳優ムロツヨシさんの魅力

今クール一番の話題作ドラマ「大恋愛」に出演中のムロツヨシさん。現役の小泉元首相の家に遊びに行っていたとか、大学を即中退して俳優を目指したとか、いい意味で裏切ってくれそうと思わせる一方、幼い頃に親が離婚し、片親に至っては今どうしているか知らないという事情を抱えている、なんとも形容しがたい人物である。

そんなムロさん。ドラマの最終回に向け、番組の宣伝を兼ねて出演した「人間モニタリング」という番組でドッキリをしかけられたときの対応が、私の涙を誘った。彼は私達が思うよりずっと、懸命に生きざるをえなかったのだ。

ドッキリの内容は?

途中から見たので詳細は分からないが、ドラマに関する雑誌インタビューという体で、仕掛け人「山田」が失礼を繰り返し、ムロツヨシさんを追い詰めるというもの。

まずは、いろいろ訊かれたことに答えるムロさんに、「~からの?」を連発し、しどろもどろにさせる作戦。だいたいの人は、「からの?」という言葉に釣られて、なんか答えなくちゃとなるところ、ムロさんは「それで?」と切り返し、おかわりの「~からの?」に別の切り返しをし、最後上手くまとめてオトした。
圧倒的な力でムロさん、勝利!

続いて、サインをお願いされるも、まさかの対象が「米粒」。驚愕するふりをする共演者の戸田さんを横目に「やってみるよ!」「ほら出来た!」と乗ってあげる、ムロさん。

さらに、友人の小泉孝太郎さんに関して15分質問を受けるも、嫌な顔一つせず「孝太郎はねぇ…」と答えていく。そして「僕は自分のことより孝太郎のことを訊かれるのが多かったから慣れてる」と余裕の切り返し。

そして最後に山田が戸田さんが席を外した隙に、「戸田さんが大好きです」とムロさんに伝えると、「告白しろ」とやさしく背中を後押し。


って、どんだけ良い奴なんですか~。

彼をそうさせるもの

でも私が釘付けになったのは、彼の返しではなく、彼がそのように返せる背景。どんなに追い込まれても、一瞬表情を止めて、そのあと笑顔を作って、なるべく相手に寄り添おうとする。

それは、家族という安心できる居場所を失い、親戚というアウエーの中で生き抜いてきた彼なりの術なんだろう。
自分はそもそも歓迎されていない、だから「自分を受け入れてくれ」と主張するより、相手を受け入れ、受け入れたことで生じる相手の心のスペースを、自分の居場所にしようと。

だからどんな無理難題も、「NO」とは言わない。

その、相手を立てることを当たり前とする姿勢に、彼のこれまで歩んできた環境の厳しさを感じることができた。と同時に、よく今まで自暴自棄にならず、前を向いてきたなと心から拍手を送った。

彼は、まさしく「辛い思いをしたからこそ、人にやさしくできる人物」だ。しかし、お人好しではない。彼には人に寄りそうのと同じく、人に裏切られ捨てられる怖さが染みこんでいる。ある意味、孤高で、孤独なのだ。

俳優は彼の天職

きっと彼は多才で、マツコデラックスさんのようなMCにもなれると思う。けれど俳優が一番の天職だ。彼はある意味、自分があって、ない。我がない分、どのような人物にもなれ、どのような人物の頭にも入り込める。だからさまざまな人物を演じながら、得られなかった幸せな体験を積み、パズルのピースをはめるように、人生の絵を完成させていく。それが幸せじゃないだろうか。

結婚するかもしれないし、しないかもしれないし、子供をもつかもしれないし、持たないかもしれない。未来が分からない中で、俳優という職業であれば、独身にも既婚者にもパパにもシングルファーザーにも、なれる。そのたくさんの選択肢を、愛らしいムロボディーにぎゅっと詰め込むことで、俳優ムロツヨシは、今よりずっと大きく、そして心豊かな人物になっていける。

彼に俳優を続けて欲しい

唯一彼に弱点があるとすれば、もしかしたら心の片隅にちょこっと残っているかもしれない「自分を受け入れて欲しい」の思い。私の思い過ごしならいいのだが、まだそれが残っているならば、そこを巧妙に突く異性が目の前に現れ、彼を操るかもしれない。

人間はどこまでいっても愛を求め、愛されることを諦めきれず、心の奥の奥に閉じ込めても、ふとした瞬間に鍵が開いて表に出る。その鍵を開ける人が、ずる賢き人物だった場合、彼ののめり込み方は、ハンパない。

だから、パートナーを選ぶなら、心から信じられる人、ムロツヨシを育ててくれる人を選んで欲しい。そうすればムロツヨシは、後々までみんなに可愛がられる俳優でいられる。
ぜひとも頑張って居続けて欲しい。