女性の心理を考えると、行くつく先はいつも「女性とは受け入れられることを強く望む生き物である」。
典型的なとこでいえば、多くの女性が「告白されること」「プロポーズされること」を望み、「いかに大事にされているか」を自信の拠り所とする。これらはすべて相手から~されることを主眼とし、そうされる我こそ価値ある存在、という価値感を持ち続けていることを意味する。
求められることに価値感を置く人々にとって、求めてくれる誰かを必要とすることは想像に難くない。だからこそ「友達」や「親友」といった私を求めてくれる存在は必須だ。
特に学生時代は、顕著で、一緒に出かける友達、授業を受ける友達、部活を共に頑張る友達、などたくさんの友達を抱えていることが、勝者の条件となる。
そして恋人が出来、家族が出来、子供が出来、と学生時期にくらべ濃密な人間関係を築くにつれ、求めてくれる事への希求は也を潜め、代わりに分かってくれることへの欲がふくれあがる。だから包み隠さず「友達」に吐露するわけだが、互いのバックグランドが違いすぎるため、話が噛み合わない。
女性はライフステージによって、180度環境が変わり、子育て中の人の関心事は、独身キャリア組とは大きくことなる。実感をもてない相談事を持ちかけられても、なかなか実情に沿った想像ができない。それゆえ、「大したことない」と過小評価してしまう。
分かってもらいたい者にとって、「大したことない」と斥けられる時、ひどくショックを受ける。ならばと「友達なんて要らないのでは?」と問いかけるのだが、大半の人は首を横に振る。友達幻想を捨ててしまった側から見ると、実在しない人間関係を追い求めるより、さっさとわかり合える人のいる未来を諦めてしまえばいいのに、と思うのだが。
分かってくれるのは目の前の人じゃなくてもいいんじゃないか?
自分のことで恐縮だが、私は30代前半まで、人と会った後小さな後悔がかならず襲ってきた。その後悔とは、「わかりきったことを、リピートしただけだった…」というもの。予定調和的な会話をして、相手のご機嫌をとって、終わり。
そこには、驚きも発見もない。多少の情報が入ってくるという利点もなくはないが、そもそも噂話に興味のない私には利益と映ることもなく、むしろそんなことしか話すことないんだという虚無の方が色濃く出ていた。
もっと、こう「今一緒に居るよね!」というライブ感が欲しいのに、なぜか目の前の人は今じゃなく、過去を見る。自らに起こった腹立たしいこと、嬉しいこと、驚いたことを披露し、私に聞かせる。それもこちらの反応は一切合切無視して。
わたし、ただただ話を聞いてくれるSiriやペッパーくんじゃないんだけどなぁ。
ということもあり、いつしか人との交わりを減らし、別の世界へと移っていった。
出会いは「本」の中に
その世界とは、「本」の中。まだまとめきれない考えや、言われてみればなるほど、という思いが詰まった「本」に、ライブ感を感じた。
今年読んだ中で一番「友達」がいた、と感じたのは
森博嗣さんの本。森さんは、もう定年されていてもおかしくないお年なのに、なぜかとても身近に感じる存在だった。ずっと探していた「友達」にあったような懐かしさがあった。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2018/04/06
- メディア: 新書
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長年感じていた悩みにフィットした解をもたらしてくれたのは、山口周さん。私とそう年は変わらない。文章の隅から隅まで、鳥肌が立つくらいの納得感があった。
武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 中経出版
- 発売日: 2018/05/18
- メディア: Kindle版
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世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/07/19
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そして「友達」というには気が引ける心の中の師匠が書いた本。山口さんと通ずるもののある、「感覚」を主とした内容になっている。
- 作者: 田坂広志
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/11/28
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これらに目を通すとき、一度も会ったことのない著者たちの心の揺れが、こちらに伝播して、まるで一緒に揺れ動いているような感覚に陥る。私の中で、共振できる著者たちと過ごすひとときは、予定調和で終わる目の前の人とのひとときの百万倍の充足をもたらす。
友達に飢えてる人ほど独りきりになろう
このような経験を通じて、人と会うことが、かならずしも友達づきあいではないし、「友達は要りますか?」の問いに、YESと言わなくてもいい、という自信がついた。名ばかりの友達より、思想を共有できる著者の方が、ずっとわかり合えてる気がする。
友達づきあいで悩んでいる人の多くは、自分に歩調を合わせてくれる人の不在を憂うが、もし私のように人間とのつきあいに虚無を感じてしまう現実を抱えるならば、人から距離を置いて、人以外のものにつきあいの矛先を向けてみるのも手だ。
人と会うのを手放すことで、本当に自分にとって必要な相手とは何かを見つめることもできるし、本のような主張をぎゅっと詰め込んだものに触れて、緩慢な思考をブラッシュアップするだってできる。
結局、分かってくれる人と出会うには、自分から環境の異なる相手の立場を想像できる力を身につけることだ。お互い、そういう力を身につけてこそ、対等な関係を築ける。
人生には友達を手放す時期も要る。
友達がいないと嘆いてる人こそ、率先して独りきりになった方がいい。